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INTERVIEW

ものづくりを通じて人と人をつなぎ、さまざまな課題を発見し解決する手助けをするFABBER達の活躍とライフスタイルをご紹介

FABBERS’ INTERVIEW Vol.01 

すべては患者さんのために。 FABの力で、 義肢装具士のものづくりをアップデートしたい。

  • 多賀重雄(38歳)
  • PODDA(Prosthesis Orthotics Digital Design Association)

FABと出会い、

ものづくりへの情熱を取り戻した。

「正直に言うと、もう自分で手を動かしてものづくりをすることもないのかな、と思っていましたね」
そう笑顔で語るのは、義肢装具士として多くの患者さんに義手や義足を製造・提供してきた多賀重雄さん。彼は現在、ものづくりの第一線から距離を置き、医療器具の企画などに携わっていると言います。

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「義肢装具士の世界は、紛れもない職人の世界。職人として培ってきた経験や勘、技術を駆使して患者さん一人ひとりに合わせて器具をつくる仕事なんです。でも僕はそもそも手先が器用じゃなくて、職人としては半人前の半人前でした。そんな中でご飯を食べていくために、医療器具に関するさまざまな企画を病院や企業に持ち込んでいたんです。そうするとそれがうまくいって、なおさらものづくりをしなくなって。たまに手を動かしてみるとだいぶ腕が落ちたなと感じてしまい、義肢装具士としては終わっちゃったかな、と思うようになっていました」
そんな時に多賀さんは、3Dスキャナや3D CAD、3DプリンターといったFABツールに出会います。
「初めて3Dスキャナを使った時は衝撃が走りましたね。これはすごい!と感動しました。また同時に、FABツールを義肢装具士のものづくりに活用するアイデアがすぐにひらめきました。それは興奮しましたよ。今まで自分の中にあったものづくりの概念を変えられるんじゃないか、また自分の手で義手や義足をつくれるんじゃないか、と思いましたから」
FABと出会ったことで再び湧き上がったものづくりへの情熱。それをきっかけに、多賀さんは「PODDA(Prosthesis Orthotics Digital Design Association:義肢装具デジタルデザイン同好会)を設立。デジタルデザインを取り入れた義肢装具づくりの普及に取り組みはじめました。そんな多賀さんの義肢装具士としてのルーツは、10数年前にさかのぼります。

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断端(切断された部分)を3Dスキャナでスキャニングし、3D CADで設計、3Dプリンターで出力したソケット(断端を収納するパーツ)。

一つの器具が、一人の人生を変えた。
その現実に心が動いた。

「僕はもともと医療系でも工学系でもなく、義肢装具士とは関係のない仕事をしていました。そんなある日、親友が交通事故にあって、右足に麻痺を患ってしまったんです。右足が麻痺していては、アクセルもクラッチも踏み込むことができない。トラックの運転手として働き、車を趣味としていた親友はひどく落ち込みました。そんな彼を救ったのが、足を保持する装具だったんです」

医師の処方により足につけることになった装具によって、絶望の淵にあった親友は、再び車に乗る楽しみを取り戻したのです。その現実に、多賀さんは大きく心を動かされました。
「一つの器具が一人の人生を変えた、その現実が僕の頭に鮮烈な印象を残しました。さらに同じ頃、地雷で傷つき義手義足をつけているカンボジアの子供たちの写真集を手に取ったりと、いくつかの出来事が重なったんです」
こうして多賀さんは義肢装具士の道を歩むことを決意し、専門学校へと入学。職人としての新たな人生をスタートしたのです。

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初めてつくり上げた義足は、
アフガニスタンの少年のために。

「学生時代には、2003年から2004年にかけて3回ほどアフガニスタンを訪れて、現地の子供に義手や義足を届けるNGOの活動に参加しました。学生は国内で義手や義足をつくるのが基本的な役割だったんですが、僕はNGOの方に頼み込んで現地での作業にも関わらせてもらいました。アフガニスタンの治安は一部緊張した場面もありましたが、それでも何度も訪れたのは『行きたい』と心から思ったからでした」

シンプルで強い想いが、多賀さんを突き動かしました。そして、現地で運命の人物に出会います。それは、不発弾によって片足を失ってしまった14歳の少年でした。
「僕が生まれて初めて人のためにつくった義足を手渡したのが彼でした。彼は義足をつけたことで両手が松葉杖から解放されて、鞄を持って歩けることになったんです。とても喜んでいましたね。僕も本当に嬉しかった。でも、初めてつくった義足でちゃんと歩いてもらえるか心配で心配で。歩いてもらえたら、喜びでいっぱいになって。これはもう一生の思い出ですね」

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アフガニスタンの街並み。国内の混乱状態は今も続く。(2010年撮影)

一人の力よりも、みんなの力で、
もっといいものをつくっていきたい。

その後、多賀さんは腕のいい職人のもとで技術を磨き、多くの患者さんに良質な義手や義足を提供していきます。しかし、職人として忙しい日々を過ごしていく中で、多賀さんはある考えを抱くようになります。

「超人的に腕のいい職人を目の当たりにしながら仕事をしていて、ふとした瞬間に思ったんです。このレベルには辿り着けないかもしれない、と。これに気づいた時は非常に落ち込み、自分に絶望しました。しかし、時間はかかりましたが自分の限界を認めた時に、それならば、他の人と一緒に技術やアイデアを出しあってつくっていけばいい。その方がもっといいものがつくれるんじゃないか、と思うようになったんです」

義肢装具士の仕事は、基本手作業。やっていることが特殊すぎて他の人が入ってくることができない「閉ざされた世界」になってしまっていると多賀さんは言います。そして、この解決策としてFABが有効だと考えています。

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多賀さんのFAB活動の拠点、IID世田谷ものづくり学校のPTA(Prototype Thinking Area)にて。

閉ざされた義肢装具の世界を、
FABの力で開いていきたい。

「たとえば3DCADを使えばデータを多くの人と共有できます。アーティストやデザイナー、プログラマーなど様々な人が同一データにアイデアを乗せていくことができるし、シミュレーションもプロトタイピングも簡単です。義手や義足を使用する患者さん自身が自分の義肢装具をつくってもいいと思うんですよね」

閉ざされた手作業の世界に、3D CADという“共通言語”を持ち込むことで、いろいろな才能を持った人が参入できるようになります。そうすれば、機能的にも、デザイン的にも、システム的にも、これまでにない優れた義肢装具を生み出すことができるかもしれない、多賀さんはそう考えています。

「だから、もっとたくさんの人にFABのことを知ってほしいですね。時々、同じ医療系の仕事をしている人や患者さん、学生さんでFABに興味がある人たちに世田谷ものづくり学校に来てもらって、FABマシンを紹介したりしてるんですよ。それで興味を持ってくれた人と一緒に3Dスキャンをしたり、造形物を組み立てたりしています。

最近では、NPO法人Mission ARM Japan主催の共同企画で『片手間Rhino』というワークショップを世田谷ものづくり学校で開催しました。これは片手だけで3Dモデリングソフト「Rhinoceros」を操作してみようという講座で、義手を使用している患者さんにもご参加いただきました」

まずはいろいろな人に「FABって楽しい!」と気づいてもらうこと。そうすることで多賀さんは、義肢装具士のものづくりを変えていこうと考えています。

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片手間Rhinoでは片手だけの操作でネームタグをモデリングし、3Dプリンターで出力した。

「僕がやろうとしていることは、決して従来の義肢装具士のものづくりを否定するものではありません。FABという新しい力を活用して多彩な才能や技術を取り込むことで、義肢装具士はこれまで以上に“体に合わせる”という得意分野に専門特化していけると思うんです。そして何より、より良い義肢装具をつくることは、患者さんのためになりますからね。データ化してあれば、過去一番良かった義手義足を簡単に再現できますし、引越しなどで病院が変わっても新しい土地で新しい義肢装具士にスムーズに引き継ぐことができますから」
時間や地域に縛られることなく、常に患者さんにとって最適な義肢装具をつくる仕組み。多賀さんは、そのものづくりの仕組みをグローバルなスケールで構築したいと考えています。

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IID世田谷ものづくり学校の鐘居和政さんと。頻繁にコミュニケーションを取り合い、PTAで開催するワークショップの企画などを行っている。

国境を越えて義肢装具を提供する
FABの仕組みをつくりたい。

「戦争が起きた国やその周辺国に3Dスキャナや3Dプリンターを持って行き、現地と日本でデータをやりとりして、最終的に現地で製造する仕組みをつくりたいんです。そうすれば現地で義肢装具を安定的に供給できるようになり、患者さんは安心して暮らせるようになります。また現地の人にとっては新しい仕事になりますし、3D CADや3Dスキャナの技術があれば他国でも働き口が見つかるかもしれません。一方、日本にとっても、若手の義肢装具士が多くの経験を積むことができるというメリットが生まれます」

関わる人すべてがWIN-WINになる仕組みの実現を目指して、今、多賀さんはそのやり方を試行錯誤しています。
「この仕組みを実現するには、まだまだ越えなければならない壁がたくさんあります。でも、志を同じくする仲間と力を合わせて、一つひとつ乗り越えていきたいと思っています。FABと出会って僕自身、意識が大きく変わり、ものづくりの現場に戻ろうと思うことができました。だから、FABにはもっと多くの人を変えられるポテンシャルがあると思います。義肢装具士のものづくりをアップデートするのはその一つ。これからFABの力を使って様々な分野で新しい動きが出てきたら、もっと面白いことになると思います。FABが僕に希望をもたらしてくれたように、僕も誰かの希望になるようなものづくりをしていきたいですね」

多賀さんは、TOKYO FABBERSが実施する「FABBERS’ ACTION PROJECT」にプロジェクトメンバーとして参加。新たな経験を重ね、ネットワークをさらに広げ、自身が思い描くものづくりの仕組みの実現へと、また一歩近づこうとしています。

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(写真左から)
石塚和人さん(IID世田谷ものづくり学校)
多賀重雄さん
鐘居和政さん(IID世田谷ものづくり学校)

 

FABBERS’ ACTION PROJECTについてはこちら
http://tokyofabbers.com/project-member

PTAについてはこちら
https://www.facebook.com/iid.pta

(文:宗像誠也(ホワイトノート株式会社)、写真:熊谷薫(TOKYO FABBERS事務局))

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