本サイトでは、現在お使いのブラウザからの閲覧を推奨しておりません。
このまま閲覧されますと、正しく表示されない場合がございます。
ブラウザを最新版にアップデートしてご覧ください。

INTERVIEW

ものづくりを通じて人と人をつなぎ、さまざまな課題を発見し解決する手助けをするFABBER達の活躍とライフスタイルをご紹介

FABBERS’ INTERVIEW Vol.05

ものづくりを楽しむこと。 そして、メカやからくりの技術を若い世代に伝えること。 FABの力を活用して、二つを実現していきたい。

  • 近藤 嘉男さん(57歳)
  • 武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科 非常勤講師

おもちゃを分解するのが好きだった少年が、 超小型メカ開発のエンジニアへ。

「ソニー株式会社に26年間勤務して、ビデオテープレコーダーや、AIBOやQURIOといったエンターテインメントロボットなどの新商品開発をしていました。専門は、主に機構の部分。ビデオテープレコーダーであれば、ビデオテープを出し入れするそのメカニズムを開発していました。一言で言うと『超小型メカ開発』ですね」 近藤さんは、6年前にソニーを退職。現在は武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科の非常勤講師として若いクリエイターにものづくりに関する経験や知識を伝えながら、自身も手を動かす日々を過ごしています。 kondo1

「物心ついた頃からものづくりが大好きでしたね。ゼンマイ仕掛けのおもちゃとかを与えられると、すぐに分解したくなってしまうんです。親からは『すぐに壊しちゃダメ、ちゃんと遊びなさい』と言われたりしてました。一応、言うことは聞くのですが、心の中では早くバラしたいなぁ、改造したいなぁと思ってました(笑)」

そんな子どもだった近藤さんは、小学生になるとますますものづくりへの興味が高まっていきました。

「当時、トランジスタラジオを自分でつくりたくて色々とやっていたんですが、なかなかうまくいかなくて…。住んでいた家の近くにはトランジスタラジオの工場があったんですが、学校帰りに毎日のように寄り道して工場の窓から中の様子を覗いてましたね。フェノール樹脂というプラスチックと出る独特の匂いを嗅ぎながら『僕もいつかこういうのをつくってみたい』って憧れを募らせていました」

それから十数年後、就職活動に際してソニーの工場見学に行った時に、入社を心に決めます。

「就職の決め手は、匂いでした(笑)小学生の頃に嗅いでいたあの独特の匂いと同じ匂いが漂ってきたんです。ラジオ少年だったのでソニーに行きたいという気持ちは当然あったんですが、決定的にここだと思った理由は、匂い。あの頃の感情が瞬時に蘇ってきて、『もうこの会社しかない!』って思いましたね」

メカ全盛の時代から、

不遇の時代へ。

そして、自身の原点に回帰した。

ソニー入社後、近藤さんは超小型メカ開発に携わるようになります。

「ビデオカメラも、オーディオプレーヤーも、当時はとにかく小型化が進められていました。その頃の記録メディアはカセットテープ。カセットテープのケースの大きさの『ウォークマン』*をつくろうと開発を進めてましたね。それが実現できたら、究極のウォークマンですよね。物理的にはもちろん不可能なんですが、コンマ1mmの世界でメカの厚さを削ったり、寸法を小さくしたりと挑戦を続けていくのが僕の仕事でした。メカの開発としては最先端。やりがいも大きくて、本当に楽しかったですね。また、当時は景気が良かったこともあって、社内の雰囲気としても『世の中にないものをつくろうよ』という前向きな空気に満ちていました。僕らも、勤務時間後や休日を使って、仲間で集まって勝手にいろいろな製品を試作したりしていました。そこで面白いものができると、役員をつかまえて『こんなのができたから商品化させてよ』って立ち話で決裁を迫ったりして(笑)、本当に良い製品であれば、役員からGOサインが出ました。それは面白かったですよね」

*ソニーのポータブルオーディオプレーヤーシリーズ

しかし、その後時代が変わり、メカは不遇の時代を迎えることになります。

「デジタル化によって記録メディアが変化してしまったんですね。メモリが主流になったことでオーディオプレーヤーも、ビデオカメラも、カセットテープやビデオテープを出し入れする必要がなくなってしまい、メカの出番が減っていってしまった。そうなるとソフトウェア開発など、本来自分がやりたかったことじゃないことに転向せざるを得ない状況になって…。そんなこともあって疲れてしまい、ちょっと休養しよう、充電期間を取ろうと会社を退職したんです」

その後、しばらくは「おとなしくしていよう」と思っていた近藤さんでしたが、眠っていた“ものづくり少年”の心は、消えていませんでした。

「自由な時間ができたので、何をしようかなと考えました。それでインターネットでいろいろと調べたりしていたのですが、やはり自分の好奇心というものはどうしようもないもので、気がつくとものづくり情報を調べていました。ものづくりが好きな人たちがいろいろとブログをアップしていて、そういうのを読んでいるとジワジワと刺激されて、居ても立ってもいられなくなって…(笑)もう一度アマチュア無線のアンテナでもつくってみるか、と。まさに原点回帰ですね。小学生の頃に憧れていたものを、もう一度つくってみようと思ったわけです。そうしてやってみたら、当たり前なんですけど、つくれるんですよね。さらに、3DプリンターやレーザーカッターなどのFABマシンも身近になっていて、昔に比べたら格段につくりやすい環境が整ってきていて…。これはもう、もっといろいろとつくるしかないなと(笑)」

自分で考えてカタチにしたものを、人に見てもらう喜び。

その経験が、ものづくり熱にさらに火をつけた。

2年前には自宅にCNC加工機を購入し、さらに昨年は「Maker Fair Tokyo 2015」に仲間とともに参加。近藤さんのものづくり熱は、ますます上昇していきました。

「Maker Fair Tokyo 2015では、ロボット好きな仲間と一緒にルービックキューブを回すロボットハンドを出品しました。モーターで指が動いてルービックキューブを回すという、ただそれだけのロボットなんですが、見ていて楽しい(笑)モーターが一回転しているだけなのに、指がルービックキューブを弾いてよけながら同じ位置に戻る。それを特に複雑なことをやらずに実現するというのがこのメカのポイントですね。もちろん、いろいろな場所にモーターを取り付けて、ソフトウェアで制御すればどんな動きでもできます。でも、そんなことをしなくてもこういうカラクリにすればできてしまう。ワイヤーで引っ張るだけでこういうイキイキとした面白い動きができるということを見て欲しかったんです」

Maker Fair Tokyo 2015に出品した作品。ルービックキューブを『回す』指の動きを追及したロボットハンド。

このMaker Fair Tokyoでの経験は、近藤さんに新たな喜びを与えてくれたそうです。

「このロボットハンドを一生懸命動かして、見てくれている人が何人もいたんです。このメカの動きの面白さや巧妙さに感心しながら写真や動画を撮ったりして、『こういう動かし方があったんですね』って言ってくださって。それは元エンジニアとしては、すごく嬉しい言葉でしたね。ビデオデッキをつくっていた時も、メカは言ってみれば裏方じゃないですか。お客さんはキレイに映像が見られればいいわけで、中でメカがどんな凄いことをやっていようと正直あまり関係がないですよね。でも、今回の経験でメカそのものに興味を持ってくれた人がたくさんいて、それは僕としても新鮮でした」

自分たちで考えて、カタチにして、それを多くの人に見てもらい、面白がったり、驚いたりしてもらう。その喜びを再発見できたことが嬉しかったと近藤さんは言います。

「ソニー時代も、プロトタイピングするのが一番好きだったんですよ。全部自分でつくれるから。とにかく自分の手でつくって仕上げたいという気持ちが強くあって。量産設計するたびに、図面を描いて人に渡すだけじゃ嫌だなと思ってましたね。設計して部品が届いたら、自分で組み立てたりしてましたから。工場で『何で近藤さん組み立ててんのよ』って言われたりしながらね(笑)。そんな僕だから、自分で考えたものを自分でつくり、世の中に発信できるというこの流れは大きな魅力でしたね」

ものづくりで培った経験や知識を、 次の世代へ伝えていきたい。

また近藤さんは、4年程前からこれまで培ってきたものづくりの経験や知識を若い世代へと伝えていく役割にも情熱を注いでいます。

「武蔵野美術大学で教えることになったきっかけは、ソニー時代の同僚のデザイナーに頼まれたことでした。受け持っている授業は二つで、一つはプロダクトデザインをやりたいと思っている学生に、材料や加工について教える「工業技術概論」です。たとえばプラスチックの部品をつくる時にどういったプラスチック製品を選ぶのか、どういうところに注意しないと、工業製品として大量生産に結びつかず苦労するのかなど、プロダクトデザインをするならこのくらいの工業技術は知っていた方がいいということを教えています。そしてもう一つが、私の専門分野。メカの動きについて学ぶ「機構学」です。歯車とか、リンク機構を使ってカラクリの話をしたりして、日常生活の中で感覚的にとらえているもののメカニズムについて学ぶ授業です。動きのメカニズムの面白さに気づいてもらい、そしてそれをヒントにして創作活動に活かしてもらえればと思いながら授業をしています」

TFインタビュー近藤 歯車2

授業の教材も創意工夫を凝らして、CNC加工機や3Dプリンターで自作している。

「もう年齢も年齢なので、新しい発想というのは若い人たちにはかなわないかもしれません。でも、ものづくりに関しては、学生の皆さんが生まれる前からずっとやってますからね。たくさんの経験を積んでいるので、そこで得た経験や知識、技術を若い人たちにたっぷり吸収してもらいたい。そして、どんどん新しいものづくりに挑んでいって欲しいと思っています。たとえば、陶芸や金工といったものづくりの伝統的手法や素材にFABの力を融合させることでどんなものが生まれてくるのかとか、今までにない可能性にチャレンジして欲しい。そうして将来的には、日本のものづくりがより良い方向に進んでいってくれるといいなと思っています」

つくることと教えること。

やりたいことが、どんどん湧いてくる。

現在、毎週金曜日にFabLab Shibuyaに通い、教材づくりや自身の創作活動を行っているという近藤さん。FABスペースを利用する魅力を次のように話してくれました。

「何と言っても、さまざまな機械が使えて自分の手でものづくりができることが最大の魅力ですね。でもそれだけじゃありません。通っていて面白いのは、人と会って話をすること。これがとても楽しいんです。たとえば、ものの素材とか機構を話題の中心にして語る機会ってなかなかないんですよね。『このメカ面白いよね』って感想を言い合ったり、『この加工こうやってやるといいよ』とかアドバイスをしたり、そういう話題を遠慮せずに話せる場所というのが、僕にとってはすごく面白い。そういう話をしているだけでも楽しくて、これはFabLabならではだと思いますね」

kondo02

また、近藤さんは、ものづくりはとにかくやってみることが大事だと言います。

「FABが身近な存在になってきたことで、ものづくりの敷居は以前よりも確実に低くなっていると思います。だから、ものづくりに興味があったらとにかくいじってみたらいいと思います。最初は自分の手を動かしてつくるというのが大事ではあるんだけど、そうなると手先の器用さが関係してくるので、なかなか踏み出せない人も出てきてしまうかもしれない。でも今では、たとえ手先が器用じゃなくてもそれを補ってくれるツールがいろいろとありますからね。3D CADもそうだし、3Dプリンターもそうです。 専門的な知識や設備がなくても部品や回路、プログラムが作成できる環境が整いつつあります。アイデアを形にするというプロセスに制限を設けずに自由な発想で作品づくりを始めて欲しい。そうしてまずはつくることに慣れておいて、その上で素材の話やメカの話を理解して、さらに上のレベルにいく、もっと世界を広げていくというやり方がいいと思いますね」

kond003

「僕自身、まだまだいろいろとチャレンジしていきたいと思っています。誰でも簡単にものづくりができるようなさまざまな3Dデータを公開したり、動くメカニズムの面白さを伝えるためのツールをつくったり、ルービックキューブを自分で解くロボットに挑戦したり…(笑)つくることと教えること。やりたいことはどんどん湧いて出てきますね」

変わることのない“ものづくり少年”の心を胸に。近藤さんは、これからもつくりながら、そして教えながら、新しいチャレンジを重ねていきます。

kondo二人 

(写真左から) 井上恵介さん(FabLab Shibuya) 近藤嘉男さん

文:宗像誠也(ホワイトノート株式会社)、写真:熊谷薫(TOKYO FABBERS事務局)

 

2016.3.29 update
FABBERS’ INTERVIEW Vol.01 
2015.08.21

FABと出会い、 ものづくりへの情熱を取り戻した。 「正直に言うと、もう自分で手を動かしてものづくりをすることもないのかな、と思っていましたね」そう笑顔で語るの […]

FABBERS’ INTERVIEW Vol.02
2015.10.09

 FABが、個人を変え、コミュニティを変え、世界を変える。 「たとえ規模は小さくても、素晴らしい哲学や情熱、技術をもった会社ってたくさんありますよね。そういう小 […]

FABBERS’ INTERVIEW Vol.05
2016.03.29

おもちゃを分解するのが好きだった少年が、 超小型メカ開発のエンジニアへ。 「ソニー株式会社に26年間勤務して、ビデオテープレコーダーや、AIBOやQURIOとい […]

FABBERS’ INTERVIEW Vol.03 
2015.12.01

写真や創作活動とは縁遠い、いたって普通の主婦でした。 「写真を撮るようになって、本当にいろいろな人に出会いましたね。写真を一緒に撮りに行く友だちはもちろん、撮っ […]

CONTACT/お問い合わせ

TOKYO FABBERS事務局(FabCafe LLP)

〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂1-22-7 道玄坂ピア1F

03-6416-9190

tokyofabbers@gmail.com

個人情報のお取り扱いについて

メールマガジンはこちらから